2016年の夏、 Pokémon GOが世界を席巻しました。熱狂的なティーンエイジャー(そして大人も)は、ピカチュウ、リザードン、ゼニガメを探し求め、街中を駆け巡り、公衆トイレや墓地までも駆け巡りました。このゲームは、ほぼ一夜にしてモバイルゲーム業界とAR(拡張現実)の力に対する人々の認識に革命をもたらしました。何百万人もの人々が、スマートフォンを目の前にかざすだけで仮想世界にアクセスできることを知ったのです。
今日、マンチェスターのすぐ南に位置する人口58万人のイギリスの都市、シェフィールドで、同様のコンセプトでありながら、おそらくはるかに崇高な使命を帯びたイベントが開催されています。しかし、シェフィールドの人々は、収集可能なモンスターを捕まえるために街へ繰り出す代わりに、街の中心部にある象徴的な建物を散策し、屋上から湧き出るデジタルアート作品に驚嘆することができます。

アートインスタレーションを訪れる人はアプリをダウンロードし、携帯電話のカメラを使って近くの建物の屋上にある仮想アート作品のロックを解除できる。
写真: マーケティング・シェフィールド2月、シェフィールドは世界最大級の拡張現実アートトレイルの一つを開設しました。「Look Up!」と題されたこのトレイルには4つの建物があり、それぞれの建物には下の歩道にQRコードが埋め込まれています。無料アプリを使ってQRコードをスキャンすると、アニメーション化された矢印が視線を上へと導きます。すると、建物の屋上から、スマートフォンの画面を通して、様々な色の風船でできた棒人間が上昇し、渦を巻き、空に消えていく様子を見ることができます。(開設から1週間で、1,500人以上がアプリをダウンロードし、約2,000個のQRコードがスキャンされました。)

いないいないばあ。
写真: マーケティング・シェフィールドこのプラットフォームとアプリは、ポケモンGOを開発しているサンフランシスコの企業、ナイアンティックと緊密に連携したメガバースという地元企業によって開発された 。バーチャルアート作品は、ユニバーサル・エブリシングとヒューマン・スタジオという他の2つの地元企業によって制作された。プロジェクトのきっかけは、シェフィールドのど真ん中にある1つの建物にさかのぼる。ジョン・ルイス百貨店は1960年代からシェフィールドの中心的存在であり、当時はコール・ブラザーズ・ストアと呼ばれていた。そしてパンデミックが襲い、店は閉店し、ジョン・ルイスは建物から撤退した。「悲しみとフラストレーションが大量に溢れ出しました」と、市のプレイスブランド兼マーケティングマネージャー、マーク・モブスは語る。ある住民は ガーディアン紙に対し、閉店は「家族の死と同じくらいつらい」と感じたと語った。
地元住民が知らなかったのは、市議会がこの建物(当時既にランドマークに指定されていた)を買い取り、壮大な再生計画を立てていたということだ。実際、この建物は4億7000万ポンド(約5億8000万ドル)規模の再開発事業の真っ最中だった。この事業では、市内中心部に新たな居住空間、オフィス、文化施設、フードホールが建設される予定だった。「しかし、これだけの変化が計画されているのに、一般市民は詳細を知らないため、まるで商店が街から出て行ったかのようでした」とモブズ氏は言う。つまり、地元住民の間では、シェフィールドは活気を失ったという見方が広がっていたのだ。
少し変化をつけるため、モブズはプロジェクト期間中、建設現場を少しだけ明るく見せるようなブランドフェンスのデザインを任されました。しかし、モブズはこうしたメッセージがもたらす影響について、決して軽視していませんでした。「私が書くものは何でも、簡単に批判される可能性があると感じていました」と彼は言います。「人々に何かポジティブなことを伝えようとすると、逆の反応を引き起こす可能性があります。そして、ある場所を取り巻く物語を変革する唯一の方法は、パブリックアートだと私は考えています。」しかし、静的なアート作品ではなく、モブズはもっと動的な何かを思い描いていました。
「Look Up!」の登場です。このプロジェクトは、たった一つの建物への介入から、瞬く間に市全体の取り組みへと発展し、住民と街の繋がりを再び築こうとしています。例えば、旧ジョン・ルイス・ビルの屋上には、ユニバーサル・エブリシングが、小さな点を目玉にした建物のようなカラフルなキャラクターのパレードをデザインしました。また、アートギャラリーを併設する市の中央図書館では、ヒューマン・スタジオがハンクという名の灰色の猫を制作しました。ハンクは屋根からゆっくりと現れ、建物と同じくらいの高さまで成長し、猫らしい無頓着さでこちらを見下ろします。
シェフィールドは、テクノロジーを活用して人々のエンゲージメントを強化した最初の都市ではありません。2018年には、ニューヨーク州バッファローのオルムステッド公園保護協会が、新たに設置された2つの標識を「ARポータル」に変え、フレデリック・ロー・オルムステッド設計の2つの公園がもし今日存在していたらどのような姿だったかを訪問者に示しました。また、今年初めには、フェニックス市がアリゾナ州立大学サンダーバード・スクール・オブ・グローバル・マネジメントと協力し、市内中心部の6か所で、訪問者が市の過去と未来についてより深く知ることができる拡張現実(AR)の宝探しゲームを開発しました。
シェフィールドでは、チームは市内の主要4か所を巡るアートトレイルを整備しました。いずれも半径約1マイル(約1.6キロメートル)以内です(歩くことができるトレイルとして設計されているためです)。ジョン・ルイス・ビルは「変化の象徴」となることを目指しているとモブズ氏は言います。大学の建物は、オープンデーで入学希望者を驚かせるのに役立ちます。また、市内の劇場街にある中央図書館は、ツアーの立ち寄り場所として「まさにうってつけ」だとモブズ氏は言います。チームは近々、アートウォークをより多くの建物に拡大する予定です。
街の暮らしの多くは路上で行われているのに、なぜバーチャルアートばかりが屋上に現れるのか不思議に思う人もいるかもしれません。シェフィールドは丘陵地帯なので、AR技術で彩られた屋上を様々な角度から鑑賞しやすいという利点があります。しかし、最も重要なのは、屋上にアート作品を置くことで「空がキャンバスになる」とモブズ氏は言います。
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