A地点からB地点まで徒歩で行きたいですか?最速の道が必ずしも最善とは限りません。でも、頼りになるナビゲーターにそう伝えてみてください。

ゲッティイメージズ
ロンドンのチャリング・クロス駅からハノーヴァー・スクエアにあるWIREDオフィスまでは、行き方が多すぎて行き過ぎてしまうほどです。地下鉄でベーカールー線に乗り10分、バスに乗り込み渋滞の中を15分、サンタンデール・サイクルかライム・バイクに乗って12分。あるいは、歩ける人はとにかく歩き続けるのもいいでしょう。ロンドンで最も美しい通りをいくつか通り抜けて、たった20分です。
Google マップや Citymapper などの旅行プランナー アプリは、歩行者オプションも含め、上記のすべてを快く提案してくれます。しかし、後者のルートは必ずしも理想的ではなく、観光客向けの店や混雑した商店街、混雑した道路を通ることになります。ほぼ同じ時間で目的地に着く、きれいで空いている脇道があるのに残念です。
しかし、状況は変わりつつある。研究者たちは、歩行者やランナーが大気汚染を回避できるよう空気の質をモデル化する方法を研究している。また、街路の美しさや、それが私たちに与える幸福感を評価する方法も研究している。しかし、依然として2つの大きなハードルが残っている。それは、データの収集と、それら全てを処理するためのアルゴリズムだ。どちらも容易な作業ではない。
努力する価値は十分にある。リビング・ストリーツの政策責任者であるタニヤ・ブラウン氏は、徒歩通勤が可能な人が、少なくとも通勤の一部区間を徒歩で通勤すると、糖尿病などの肥満関連疾患の発症率が低下し、精神衛生状態が改善され、近隣住民全員がより安心感を得られることを示唆する研究が増えていると指摘する。「旅行計画アプリは健康状態を改善する可能性を秘めていますが、それはユーザーインターフェースで歩行が優先される場合に限ります」とブラウン氏は言う。「歩行は、健康を維持するための身近で簡単、そして無料の方法です。」
田舎を歩くためのアプリは数多くあり、観光客向けに設計されたものもいくつかあります。また、マッピングやルートプランナーの機能も向上しています。公共交通機関や有料のマイクロモビリティに加え、Citymapperでは、移動に制限のある方でも利用できる鉄道駅を教えてくれるようになりました。また、Googleマップでは、混雑の少ない道路沿いの自転車ルートをハイライト表示します。ロンドン交通局は、歩行促進策の一環として、駅間のアクセス可能なルートを追加する予定のアプリ「Go Jauntly」を支援しています。しかし、特にアクセシビリティに関しては、階段の上り下りが難しい人に階段だらけのルートを提供しないようにするだけでなく、タクシーや電動自転車に乗るのと同じくらい簡単に歩くことができることを示すなど、更なる改善が必要です。「現在、アプリプロバイダーに収益をもたらすことができないアクティブな移動手段は、アプリのユーザーインターフェースにおいて、民間のハイヤー会社へのリンクを優先する形で優先順位が下げられることがよくあります」とブラウン氏は言います。「旅行アプリの改善は重要です。移動支援を必要とする歩行者だけでなく、それ以外の人々にとっても重要です。」
ロンドンのチューリング研究所の研究者たちは、大気汚染に関する研究の一環として、歩行ルート問題の両面、つまりデータ収集とアルゴリズムの開発に取り組んでいます。研究者たちは、ロンドン市民に特定の時間と場所における大気汚染の状況を伝えるために、大気質データを収集し、予測モデルを構築しています。
パトリック・オハラ氏は、ウォーリック大学の研究助手であり、チューリング研究所の客員研究員でもあります。大気汚染のモデル化と、それをウォーキング、ランニング、サイクリングルートに適用する研究に取り組んでいる数名の研究者の一人です。特に、ワークアウト用の環状ルートを作成するツールの開発に取り組んでいます。「まず第一に、データを処理する必要があります」と彼は言います。「そして第二に、そのデータを用いてルートを見つけるアルゴリズムを使用する必要があります。」基本的に、大気汚染モデル化、あるいはその他のデータセットを、経路や道路網と組み合わせる必要があります。
渋滞中のドライバーにとって最速ルートを見つけるといった、単一の制約を持つ単一のネットワーク上の単一のデータセットであれば、これは非常に簡単です。しかし、複数のデータポイントと制約、例えば最も空気がきれいな最速ルートなどを追加するとなると、はるかに複雑になります。都会の歩行者は、新鮮な空気を吸うために10キロも遠回りしたくありません。「もし大気汚染だけを考慮し、距離を気にしなければ、行き過ぎてしまうため、非常に悪いルートになってしまうでしょう」と彼は言います。「大気汚染だけを考慮すると、ルートの探索に非常に長い時間がかかります。問題は複雑です。」
車の旅程計画アプリは複数のデータ入力を管理しているように見えるかもしれないが、交通渋滞や道路の通行制限を考慮しても、あくまでも移動速度を最適化しているだけだ。「重要なのは、後者の制約がないことだ」と彼は付け加える。
この追加の制約が加わると、データを処理して解決策を導き出すのにかかる時間が大幅に長くなります。オハラ氏によると、大気汚染ルートの回答を得るには現在数分から数時間かかるとのことです。ほとんどの人が旅程プランナーアプリから数秒以内の回答を期待している状況では、これは問題です。しかし、近似アルゴリズムやヒューリスティックスを用いることで、最善のルートではなく、適切なルートを選択することで、この時間を短縮することは可能だと彼は付け加えています。
つまり、数年以内に、チューリングの汚染モデルを使用して特定の時間と場所の空気の質を予測できるようになりますが、既存の旅程プランナーに単に統合するのではなく、そのデータに基づいて散歩を計画するためのスタンドアロン アプリが必要になる可能性があります。
これは、ランナーや喘息持ちなど、大気汚染に敏感な人にとっては便利ですが、異なるデータセットを取り込むアプリの開発には適していません。また、完璧な都市型ウォーキングルート計画アプリを開発するには、他にも考慮すべき点が数多くあります。警察のデータは、夜間のウォーキングにおいてより安全なルートを提案するために活用できます。しかし、SketchFactorというアプリを使って安全データを導入しようとした過去の試みは、ユーザー評価システムが人種差別的だと批判され、失敗に終わりました。これは、すべてのデータをクラウドソーシングに委ねるのが最善ではないことを示唆しています。しかし、クラウドソーシングが有効な場合もあるとオハラ氏は指摘し、人気ルートの情報源としてランニング・サイクリングアプリ「Strava」を挙げています。
クラウドソーシングが活用できるもう一つの分野は、街路の美しさの評価です。ウォーリック大学出身でチューリング研究所に所属するチャヌキ・セレシンヘ氏も研究者です。彼女は、人間の評価者によって訓練されたニューラルネットワークを用いて、あらゆる屋外画像からその美しさを評価するアルゴリズムを開発しました。彼女はScenicOrNot.comというウェブサイトで20万枚の画像に150万回の評価が寄せられました。「私は都市の美しさを理解することに非常に興味を持っています。なぜなら、美しい場所と幸福感のつながりを実際に研究しているからです」と彼女は言います。「そしてもちろん、私たちのほとんどは都市に住んでいますからね。」
ScenicOrNotはイギリスの1平方キロメートルあたり1枚の写真しか持っていないが、都市環境の中で最も美しい通りを選ぶには情報が足りない。そこで彼女はGoogleストリートビューに目を向け、自身のアルゴリズムをこのビジュアルマッピングシステムに適用した。「街路図から美しい場所が分かります」と彼女は言う。「完璧ではありませんが、かなり良いです。」Googleストリートビューに載っている場所には、美しさの評価を与えることができる。
ニューラルネットワークは緑豊かな場所を好むことを学習したと彼女は言う。しかし、都市には並木道以外にも多くの魅力がある。特徴や物理的な違い、特に開放的な間口と大きな壁のない建物を認識できる一方で、都市デザインについては改善の余地がある。「現時点で抱えている問題の一つは、アルゴリズムが建築デザインの種類を区別できないことです」と彼女は言う。「[アルゴリズムは]より広い視野で周囲の景色を見ているので、通りに木々があれば高い評価を得ます。一方、コンクリート造りの建物は低い評価になります。たとえ私がその建物のデザインの方が高く評価されても当然だと考えているとしてもです。」
セレシンヘによる関連研究では、歩行者をより美しい通りに誘導できれば、彼らの健康に良い影響があると示唆されています。しかし、ユーザーの気分を追跡し、地図上にプロットする「Mappiness」というプロジェクトのおかげで、私たちが最も幸せを感じる場所に関するより直接的なデータソースがあります。「[このアプリは]1日に2回、あなたの気分と行動を尋ねます」と、このシステムを開発したサセックス大学の講師、ジョージ・マッケロン氏は説明します。「そして、あなたが答えている間に、GPS位置情報を取得します。」
そのデータを使えば、ウォーキングをする人を、より幸福なルートに誘導するアプリを開発できるかもしれない。オハラ氏の大気汚染追跡アプリがランナーを空気のきれいな道に誘導するのと同じだ。「幸福度データでも同じことができる。人々が幸福を感じる場所を優先するルーティングアルゴリズムを作ればいい。大気汚染に関する他の選択肢に加えて、これを実行できれば、かなり良いことだろう。」
通勤を少しでも快適にすることが、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのマーティン・トラウンミュラー氏が共同開発中のアプリ「Likeways」の核心です。「GoogleマップやAppleマップなどの一般的なルート検索アプリは、A地点からB地点までの最短ルートを提供するため、往々にして交通量の多い退屈な幹線道路を案内してしまい、すぐ近くに隠れているかもしれない隠れた魅力を見逃してしまうことがあります」とトラウンミュラー氏は説明します。「Likewaysは、こうした隠れた都会の名所を見つけ出し、ルートに組み込むことで、不快な通勤を快適な体験に変えます。」
このアプリはソーシャルメディアのデータを分析し、街を歩く人にぴったりのレストランやカフェなどの興味深い場所を見つけます。しかし、朝の通勤途中にコーヒーを飲む場所を提案するだけではありません。「一般的な位置情報ベースのソーシャルネットワークは、バーやショップといった特定のビジネス施設の評価と共有に限られていますが、Likewaysでは、展望台や木など、あらゆる地理的位置を『タグ付け』できます」と彼は言います。「このプロセスにより、位置情報に基づくデジタル都市レイヤーが構築され、アプリはそれを使ってナビゲーションルートを生成します。」将来的には、ルートの安全性と快適性も考慮に入れたいとトラウンミュラー氏は考えています。
彼によると、目的は通勤者を都市探検家に変え、歩行者がただ通り過ぎるのではなく、街の新しいエリアを探索するよう促すことだという。このアプリは現在も開発中だ。2016年に初めてリリースされたものの、将来の再リリースを前に中止された。それまでの間、より美しく、清潔で、混雑の少ない歩行ルートを探索し、見つけるのは私たち次第だ。仕事に遅れるかもしれないが、その分、より健康的で楽しい通勤になるだろう。
この記事はWIRED UKで最初に公開されました。